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  アルゼンチン・タンゴの魅力は、何と云ってもそのエレガントな立ち姿。そして流れるような体の動きにあります。先に書いたようにタンゴは元々、港町の歓楽街で生まれたダンス・ミュージックです。それが1910年頃にパリで大人気を博し、母国では売春婦とやくざ者の踊りとして蔑まれていたミロンガ(Milonga)が、図らずも日の目を見た。パリの社交界で磨き抜かれたことから(コンチネンタル・タンゴ)、他のラテン・ダンスとは異なる運命を辿ることとなります(タンゴの黄金期は1940〜50年代)。

 

  こちらの映像では、プロダンサーのテクラ・ゴリチァーニさんが女性パートの基本的な動き、足技を見せてくれています(あらゆるダンスの基本ですが、頭の位置がほとんど変わりません!)。何とセクシュアルなムーブメントでしょう♪ カミナンド(歩く Caminando)、クニータ(前後に揺れる Cunita)、ガンチョ(足を絡ませるGancho)、そしてサカーダ(払う Sacada)。まさに繊細な足の動きだけで女の情念、羞恥、憎悪、嫉妬、熱情が見事に表現されています。おみ足も、たんとおきれい♪ これだもの。そりゃあ、野郎どもは瞬殺されますって。しかしタンゴほど、女性はからだの線がピチッと出るドレスにピンヒール、男性はダブルのスーツにスリータックのスラックスが似合うダンスもありません。まさに Bella y Bestia (美女と野獣) です。

 

 

曲は『エル・ウラカン』(El Huracan)。”台風”という意味の、タンゴを代表するスタンダード曲で1932年にアルゼンチンの楽団のリーダーであったエドガルド・ドナートと弟のオズバルドによって作られました。エドガルドは他にも『淡き光に』(A media luz)という名曲も残しています(1926年)。