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お陰様で拙著『平和のバトン〜広島の高校生たちが描いた86日の記憶』を読んで下さった全国の皆様から、様々な感想が寄せられています。しっかりバトンは渡せただろうか作家にとって、読者の声ほど、励まされ、癒やされ、力づけられるものはありません。

 

新型コロナウイルスの影響で、今年は変則的な夏休みとなりました。学校へ行けない、授業が受けられない、友だちに会えない。子どもたちは、これまで経験したことがなかった非日常に直面し、驚き、戸惑い、悩み、苦しんだことでしょう。一方で、私たちが当たり前と考えていた日常が、必ずしも普通ではなかったことを知り、その大切さにも気づいたはず。

 

この広い世界には、学校へ行きたくても行けない、授業を受けたくても許されない、友だちに会いたくても禁じられている、生きたくても生きられない同世代の友だちがたくさんいます。これまで、自分とは違うどこか遠い世界の話だと思っていたことがほんの少し、ほんの少しだけ、身近に感じられるようになったのではないでしょうか。

あの朝も、広島の子どもたちはいつもと同じ、どこにでもある極々普通の一日が始まると思っていました。授業はないけれども、友だちに会える、食べるものはないけれど、みんなとおしゃべり出来る、歌を歌える。あの悪魔が舞い降りるまでは…。

 

拙著を読むことで今を生きる子どもたちが、時空を超えてあの日の広島の子どもたちに、そしてこの世界のどこかでじっと苦しみに耐えながらも学校へ行き、友だちとおしゃべりをすることを夢見ている子どもたちに寄り添うきっかけともなれば、これほど嬉しいことはありません。

 

リレーは終わらない。たくさんの子どもたち、そしてかつては子どもだった大人たちがバトンを受け取り、しっかりと未来に手渡す。それが、幸運なことにも平和しか知らない私たち日本人に科せられた責務です。リレーは、この平和が続く限り終わらない。終わらせるわけには行きません。

 

『平和のバトン  広島の高校生たちが描いた8月6日の記憶』|本のあらすじ・感想・レビュー - 読書メーター