
高市早苗 自由民主党総裁が「高市早苗が、内閣総理大臣で良いのかどうか、今、主権者の皆様に決めて頂く」と啖呵を切り、選挙戦に突入しただけあって今回の衆議院議員総選挙は事実上の信任投票となり、ご周知の通り自由民主党、いや高市早苗内閣総理大臣”個人”の圧勝に終わりました。まさに欧米各国で吹き荒れる右派ポピュリズムの嵐が、極東にまで到達した結果と云えるでしょう。
高市総裁は、「時折涙を見せながら、歯切れ良くワンフレーズで方針のみを語り、間違っても七面倒くさい政策の中身は語らない」といったネット時代の鉄則を貫き、ドナルド・トランプ米大統領が実践して見せたオールド・メディアを切り捨てSNSに戦力を集中する選挙戦略を物の見事に踏襲。選挙期間中のX公式アカウントのフォロワー数は約3万5000人増と各政党党首を大きく引き離し、これまで政治に関心が低かった若い無党派層をも味方に引き入れ歴史的勝利を収めました (こちらは5年前に綴ったトランプ大統領のメディア戦略に関する考察です。http://japanews.co.jp/concrete5/index.php/Masazumi-Yugari-Official-Blog/2020/2020-10/希代のトリックスターのお通りだ)。
自由民主党の対抗勢力ならんと急遽旗挙げした中道改革連合の敗因は、すでにメディアで語り尽くされていますが、要は有権者に「見飽きたおじさんたちが『生活者ファースト』と口では云いながらも、現実と遊離した抽象論をダラダラと並べ立てた挙げ句にありきたりな、しかも実現性の低い公約しか出して来ない」準備不足を見透かされてしまったからに他なりません。どう贔屓目に見ても、心沸き立つような新党らしさは微塵も感じることが出来ませんでした。
尤も、見誤ってはならないのは、彼らが掲げる理想や理念が必ずしも拒絶されたわけではないといった点です。解散から投開票まで僅か16日だったとは云え、党名から公約に至るまで悉くブランディングが為されていなかった。酷な云い方をすれば、高校生の文化祭レベルの手作り感覚。これでは流石に有権者も、彼らに未来を託そうとは思えないでしょう。

英詩人ジョン・ミルトンの不朽の名作『失楽園』 (Paradise Lost) の挿絵「地獄の会議を主宰するサタン」(Satan Presiding at the Infernal Council)。ジョン・マーティン画。
他方、追加公認を加えれば単独で衆議院議員定数の3分の2を確保した自由民主党が我が世の春を謳歌し、安定政権を維持出来るかどうかは未だ不透明と云わざるを得ません。高市総理自ら閣僚に「大事なのはこれからだ」と檄を飛ばしたように、庶民感覚から云えば (何ら結果を出していないだけに) 「もう少しやらせてみてはどうか」、”政治ショー”の続きを見てみたいといった”選択”であったように思います。
そもそもこれまで地盤・看板・鞄を持たず、派閥にも属さず一匹狼で闘って来た高市総裁に、これだけの大所帯をまとめるだけの力量があるとはどうしても思えません。政治家という人種は、勝ち馬には三拝九拝で乗るものの一度、形勢が不利と見れば義理も人情もどこ吹く風。蜘蛛の子を散らすように四分五裂するものです。仏詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ曰く「無知な友人ほど危険な者はない。賢い敵の方が余程ましだ」 (Rien n'est si dangereux qu'un ignorant ami ;Mieux vaudrait un sage ennemi. 『寓話詩』より)。
それだけに、「国民から政策転換を何としてもやり抜いて行けと、力強い形で背中を押してもらった」と豪語しようが、特別国会期間内に物価対策の効果が現れなければ我慢性のない移り気なネット民は、手の平を返したように政府批判に回るでしょう。高市総理には、党内外で常に”浮き草”の如き危うさがついて回ります。
圧倒的多数を背景に、『国民会議』を経て2年間に限った食料品の税率ゼロの中間取りまとめを夏前に行うことは物理的には可能でしょう。しかしながら財源については自由民主党内でも様々な意見があるため、実現までには紆余曲折が予想されます。また、”責任ある積極財政”が国際金融市場からノーを突きつけられれば、夏前までに経済政策が暗礁に乗り上げる懼れもあります。当然のことながらGDPが我が国の約4.5倍もある隣国 中華人民共和国は助け船を出してはくれません。
さらには、選挙期間中には遂に詳細を明かさなかった「国論を二分する大胆な政策」を勢いに任せてゴリ押しすれば新たな政界再編を生み、一転して自民党自身が解党の危機に追い込まれる可能性も無きにしも非ずです。
高市総理は、イタリア共和国の右派政党”イタリアの同胞”の党首であり、ポスト・ファシズムの急先鋒と目されながらも堅実に経済・財政改革を実現しているジョルジャ・メローニ首相と肩を並べるのか。それとも財源の裏付けのない大規模減税 (通称 ミニ・バジェット) に踏み切り、英金融市場において国債・ポンド・株式のトリプル安を招き、僅か44日で辞任に追い込まれた英国のリズ・トラスト首相の二の舞となるのか。移り気な浮動票に支えられた孤高の人、高市総理の真の正念場はこれからです。














































